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相続で知っておきたい遺留分請求の流れと対策2026.01.07

相続で知っておきたい遺留分請求の流れと対策

はじめに

相続では、遺言書があっても「希望どおりに分けられない」ことがあり、その代表例が遺留分です。遺留分とは、配偶者や子、直系尊属(親など)といった相続人に、最低限の取り分を保障する仕組みで、遺言や生前贈与があっても一方的に奪われることはありません。

もし遺留分が侵害されていた場合、相続人は財産を多く受け取った相手に対して、不足分に相当する金銭の支払いを求めることができます。ただし、この請求には期限があり、一定期間が経過すると権利が消滅してしまうため、早急な判断・着手が求められます。

本記事では、遺留分の考え方、権利者の範囲、対象となる財産と計算のポイント等、相続で知っておきたい遺留分請求の流れと対策について詳しく解説します。

相続における遺留分とは?民法が保障する最低限の権利をわかりやすく解説

遺留分とは、一定の法定相続人に「最低限これだけは遺産を受け取れる」と法律上保障された取り分(権利)です。ただし、遺留分は自動的にもらえるものではありません。

遺言や生前贈与などで遺留分が侵害されている場合、権利者が請求(遺留分侵害額請求)してはじめて、金銭の支払いを求められる仕組みです(2019年7月1日以降民法第1046条第1項)。

遺留分の制度ができた理由と法定相続分との違いについて詳しく解説

遺留分制度の背景には、遺言の自由を一定範囲で認めつつも、「遺された家族の生活を守るため」に最低限の取り分は確保すべき、という考え方からきています。たとえば、遺言で特定の人がすべての遺産を相続してしまうと、残された配偶者や子の生活が不安定になり得るため、民法において一定の相続人に最低限取得を主張できる権利を定めているのです。

一方で法定相続分とは、「遺言がない場合などに、遺産を分ける際の目安となる割合」です。とはいえ、法定相続分は遺言や遺産分割協議で変更できるため、強制力のあるものではありません。これに対して遺留分は、請求するかの判断は当事者に委ねられているものの、遺留分以下の取得分の場合、侵害している相手に侵害額の請求が認められています。

遺留分の権利を持つ相続人の範囲と配偶者・直系尊属・子の具体的なケース

遺留分を請求できるのは、原則として「兄弟姉妹以外の相続人」です。つまり、配偶者・子(または代襲相続人)・直系尊属(親等)が「遺留分権利者」になります。

なお、配偶者は常に相続人になるため、遺留分トラブルの中心になりやすい立場です。

一方で、直系尊属(父母・祖父母等)が相続人になるのは、被相続人に子(または孫などの直系卑属)がいない場合です。子がいるケースでは、親が相続人になることはないため、遺留分の話題も基本的には「配偶者+子(または代襲相続した孫)」の構図がほとんどです。

また、「子」には実子だけでなく養子も含まれますが、たとえば配偶者の連れ子は、法律上は養子縁組をしていない限り相続人にならないため、遺留分の前提(本当に相続人としての権利があるかどうか)から確認が必要です。

兄弟姉妹や甥姪は遺留分の対象外?相続人の順位と判断ポイント

相続人の基本ルールは、配偶者は常に相続人となり、第1順位に子(代襲で孫など)、第2順位に直系尊属(親等)、第3順位に兄弟姉妹(代襲で甥姪)と定められています。

遺留分を検討する上で重要なのが、兄弟姉妹(および代襲相続人である甥姪)には遺留分が認められていない点です。例えば、相続人が配偶者と兄弟姉妹だけのケースでは、遺言で「全財産を配偶者に」と記されていても、兄弟姉妹は遺留分請求が出来ません。

遺留分請求の対象となる財産一覧と不動産・贈与・遺贈の注意点(民法第1042条)

遺留分侵害額請求は、原則として「遺産そのものを取り戻す」手続きではなく、侵害額に相当する金銭の支払を求める制度です。そのため、まずは遺留分の計算において、どの財産が「算定の基礎」に含まれるかを押さえる必要があります。

具体的には、以下が算定の基礎に含まれる財産一覧です。

・相続開始時点で被相続人が持っていた財産(預貯金、不動産、株式など)

・遺贈(遺言で特定の人に渡す財産)

・死因贈与(亡くなったことを条件に渡す財産)

・生前贈与(一定の条件・期間に該当するもの)

なお、不動産が絡む場合、遺留分は土地や建物そのものを取り戻す権利ではなく、原則として「不足分を金銭で精算する」ことになります。そのため、「不動産を誰が取得するか」と「不足分を誰が金銭で負担するか」を分けて考えると、整理しやすいでしょう。

生前贈与や遺言による遺贈があった場合の遺留分侵害額の計算方法

遺留分侵害額の計算は、

  • 算定の基礎となる財産額 → ②遺留分額 → ③侵害額(請求できる金額)」

の順で行われます。

それぞれの簡単な計算式は以下のとおりです。

  1. 算定の基礎となる財産額
    相続開始時の財産の価額 +(一定の条件を満たす贈与等の価額)− 債務の全額
  •  遺留分額
    算定の基礎となる財産額 × 遺留分割合
  •  遺留分侵害額
    遺留分額 −(遺留分権利者が相続等で取得した財産の価額 + 遺贈・特別受益に当たる受領額)+(遺留分権利者が承継する債務の額)

また、生前贈与がどこまで計算対象になるかは一律ではなく、原則として「相続人以外への贈与は相続開始前1年以内」「相続人への贈与(婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与等)は相続開始前10年以内」となります。ただし、遺留分を侵害すると知りながら行われた贈与などは、期間制限の扱いが変わる点に注意が必要です。

なお、複数の受遺者・受贈者がいる場合は、負担の考え方にルールがあり、生前贈与が問題になる場合は、原則として「新しい贈与から」請求しなければなりません。

遺留分割合はどれくらい?配偶者・子・親それぞれの場合を具体的に紹介

遺留分は、原則として「遺産全体の2分の1」が対象ですが、直系尊属(親など)のみが相続人になる場合は「3分の1」になる点に注意が必要です。各人の遺留分割合については、原則として「遺留分全体の割合 × 各人の法定相続分」で計算します。

相続人が配偶者と子の場合

相続人が「配偶者+子」または「子のみ」の場合、遺留分全体の割合は「2分の1」です。

たとえば、「配偶者と子1人」が相続人であれば、法定相続分は配偶者2分の1・子2分の1になり、遺留分割合は配偶者も子も「2分の1×2分の1=4分の1」です。

また、子が2人であれば、配偶者は「2分の1×2分の1=4分の1」、子はそれぞれ「2分の1×4分の1=8分の1」が遺留分割合となります。

相続人が親のみの場合

次に、被相続人に子がいない場合、「親(直系尊属)」が相続人になるケースもあります。

相続人が直系尊属のみであれば、遺留分全体の割合は「3分の1」です。

つまり、「両親2人のみ」が相続人なら、法定相続分は各2分の1なので、各人の遺留分割合は「3分の1×2分の1=6分の1」です。

相続人が配偶者と親の場合

「配偶者+親」が相続人というケースもあり、この場合は直系尊属のみではないため、遺留分全体の割合は「2分の1」です。

各人の遺留分割合は、法定相続分(配偶者2/3・親1/3)で按分し、配偶者は「2分の1×3分の2=3分の1」、親は「2分の1×3分の1=6分の1」となります。

遺留分侵害額請求の基本的な流れと準備しておきたい資料

遺留分侵害額請求は、実務上は次の流れで進むのが一般的です。

  1. 遺言書・相続関係・財産状況の把握

最初に、遺言書の有無と内容を確認し、正式な相続人、遺産(預貯金・不動産・有価証券・保険など)を調査します。生前贈与や死因贈与、遺贈がある場合は内容も確認します。

  • 遺留分額と侵害額の試算

基礎となる財産額→遺留分額→侵害額をベースに、「請求する金額の根拠」を固めます。争いになりやすいのは、不動産評価や贈与の内容(いつ・誰に・何の目的で・いくら渡したか)なので、資料で裏付けできる状態にしておくのが理想です。

  • 相手方への意思表示

遺留分侵害額請求は、期限内に相手方へ請求する意思を示す必要があります。実務上は、後日の証拠にもなるため、内容証明郵便で通知する方法がよく用いられます。

  • 当事者間での協議

遺留分侵害額請求は、金銭請求が原則なので、相手方が現金を用意できない場合には、分割払い・支払期限の設定など現実的な着地点を協議します。

  • 話し合いが難しい場合は家庭裁判所の手続きへ

当事者間で折り合えない、直接の話し合いが難しい場合は、家庭裁判所の調停を利用します。

なお、手続きの中で準備しておきたい資料の例は、次のとおりです。

・被相続人の死亡が分かる資料、相続人関係が分かる戸籍一式

・遺言書、遺産分割協議書(ある場合)

・遺産の内容が分かる資料(通帳写し、登記事項証明書、固定資産評価証明書など)

・贈与・遺贈の内容が分かる資料(贈与契約書、振込記録、贈与税申告書控えなど)

・裁判所の書式(申立書等)や添付資料一式

遺留分侵害額請求の時効と期限を過ぎた場合の消滅リスクに注意

遺留分侵害額請求には、原則として「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与・遺贈があったこと」を知った時から1年で時効となり、また相続開始から10年が経過すると(知っていたかどうかにかかわらず)自動的に権利そのものが消滅します。

実務上は、「期限内に相手方へ請求の意思表示をしたか」が重要です。遺産内容の把握や金額の試算に時間がかかるほど不利になりやすいため、少しでも侵害の可能性があるなら、資料収集と並行して早めに専門家に相談し、期限を意識しながら手続きを進めましょう。

遺留分侵害が起きてしまった場合の対策

遺留分侵害がすでに起きている場面では、気持ちよりも先に、数字と根拠をそろえて交渉の土台を作ることが現実的です。遺留分侵害額請求は、金銭の支払いを請求するため、話し合いの中心は、「いくらが妥当か」「その計算の前提は何か」になります。

まずは「遺留分侵害額」を試算して金額を可視化する

遺留分トラブルが長引く原因は、「何が争点なのか」が当事者間で噛み合っていないことが多い点にあります。そこで最初にやるべきは、試算で金額を可視化することです。

ここで重要なのが、基礎財産額に入れる贈与の範囲です。生前贈与が絡むと、どこまで遡って算入するかで金額が大きく変わります。遺留分のトラブルは生前贈与の整理や不動産評価など、前提となる数字の整理が難しいケースが多いため、相続税評価に基づく試算や資料整理は税理士に相談すると進めやすくなるでしょう。

不動産評価・贈与の整理で揉めどころを減らせる

遺留分トラブルで揉めやすいのは、不動産の評価と贈与の有無や金額です。特に不動産評価は、「どの評価を前提にするか」で金額が大きく変わります。

たとえば、相続税申告の場面では、土地は路線価等のルールに沿って評価し、建物は固定資産税評価額などをベースに整理していくのが一般的ですが、遺留分の話し合いでは、当事者間でどの評価で合意するかが争点化しやすいです。

少なくとも「相続税評価での試算」「評価の根拠資料(固定資産評価証明書、路線価図、倍率表、登記事項証明書など)」をそろえて、説明できる状態にしておくのが現実的です。

税理士に相談するメリット|試算・評価・申告面を一気通貫で整理できる

遺留分侵害で揉めている場合、税理士に相談するメリットは、試算によって金額を可視化できること、財産評価の根拠をそろえた上で侵害額の目安と根拠資料を整理できることです。

特に不動産や非上場株式など、評価の前提がずれると金額も大きく変わる財産があるケースでは、資料を基に評価の考え方を整理することができれば、当事者間で「どの数字を前提に話すのか」を合わせやすくなります。

なお、相続税申告が必要な場合は申告期限があるため、遺留分の話し合いと並行して、申告に向けた財産評価や必要資料の整理を進められる点もメリットです。

遺留分制度のまとめと納得できる相続を実現するためのポイント

遺留分は、一定の相続人に最低限の取り分を保障し、相続の偏りによる不公平感や生活基盤の喪失を防ぐための制度です。遺言書があっても、遺留分を持つ相続人は、侵害された分について「遺留分侵害額請求」として金銭の支払いを求められます。

一方で、遺留分の争いは感情面が先行しやすく、当事者同士だけで整理しようとすると、論点が拡散して長期化しがちです。納得できる相続に近づけるためには、まず「誰に遺留分があるか」「遺留分割合はどれくらいか」を押さえた上で、遺産の全体像と評価の前提をそろえ、金額の目安を共有することが現実的な第一歩になるでしょう。

もし大分市周辺で遺留分や相続税申告でお悩みでしたら、早い段階で当事務所にご相談ください。財産評価や必要資料の整理、相続税の試算などを通じて、「数字」で可視化するところから一緒に進めていきましょう。

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    この記事の監修
    佐藤純也税理士事務所 / 所長
    佐藤純也

    ・法政大学卒業
    ・2014年大分市にて独立開業

    保有資格
    -税理士(南九州税理士会大分支部 登録番号91282)
    -簿記検定1級(日本商工会議所主催)
    -Certified Risk Manager(RM協会)
    -General Chief Finance Officer(日本CFO協会)
    -Affiliated Financial Planner(日本FP協会)
    -2級FP技能士(厚生労働省)
    -認定経営革新等支援機関(九州財務局・九州経済産業局)
    -M&Aシニアエキスパート(金融財政事情研究会)

    所属団体
    -南九州税理士会大分支部
    -TKC全国会

    私の使命は税務の専門家としてお客様に寄り添い真摯に対応しお客様に喜んで貰うという事です。
    お客様の分からない!に対し全てお応えする「任せて安心!」をモットーに日々従事しております。



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